ワカメ
Undaria pinnatifida (Harvey) Suringar

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胞子葉(めかぶ)
 食用とするのは胞子体で,この胞子体は水温が比較的低くなる晩秋から早春にかけて出現する。

 ワカメの葉部は生育初期には卵形全縁で,やがて茎と葉の境目に櫛の歯状の切れ込みを生じ,しだいに両縁に多数の切れ込みを持った成体の羽状葉になる。

 ワカメの胞子嚢群は茎の両側に折り重なるように形成される胞子葉いわゆる”めかぶ”にある。

 晩春に胞子嚢郡から放出された西洋梨型の遊走子は,それほど遊泳力はなく短時間で落下付着し,分裂がはじまり顕微鏡的な雌雄配偶体になる。また,遊走子の遊泳時間は主に水温に左右されている。

 配偶体は糸状で不規則に分裂し,数100mmの大きさになる。雌性配偶体は雄性配偶体に比較して細胞が大きく,分岐が少ない。水温の高くなる夏季の間は雌雄配偶体で生育し、早秋に成熟する。雌性配偶体の生卵器先端には楕円形の卵が形成され,雄性配偶体の造精器から放出された精子と受精し,芽胞体となる。

 芽胞体は卵円形の単葉の葉状体になる。葉状体の生長は著しく1ヶ月くらいで目視できるようになり3−5ヶ月で成体となる。

 ワカメは食品として重要な有用海藻の一つであり,ノリと並んで日本人に最も親しまれている海藻である。しかし,その形態や色を正確に知っている人はあまりいない。ワカメは緑色と思っている人が多く,磯でアナアオサを見て”ワカメ”と言う人をしばしば見かける。

 分布は本来,日本,中国,朝鮮半島,ウラジオストック辺りであるが,近年,その幅広い温度特性から多くの国で生育地を広めている。これは,海上交通や養殖などが原因とされている。フランスの大西洋や地中海沿岸で宮城県から輸出された養殖カキ種苗に着生していたワカメが繁殖し始め,ヨ−ロッパにまでその分布域を広げている。